
毛穴が目立つ原因は様々ですが、肌がくぼむように開いた毛穴に悩んでいる方は、もしかしたら脂性肌にも悩んではいないでしょうか?
くぼんだ毛穴を器のようにして溜め込まれた皮脂を見るたび、「もしかして、この脂性肌が毛穴の原因なのでは?」と、薄々感じ取っている方も多いかもしれません。
人の肌質は環境や遺伝、または年齢などで変化しますが、果たしてこれに抗うことはスキンケアのみでも可能なのでしょうか。
脂性肌の毛穴はスキンケアで治る?

毛穴はニキビなどの肌トラブルとは違い、病気として認められている異常ではありません。
毛穴自体は誰にでも存在するものであり、ストレスや遺伝など、なんらかの要因によって開きが目立っている状態といわれています。
正直なところ、スキンケアで完全に「毛穴レス」の状態までもっていくのは難しいと言わざるを得ません。
スキンケアで目指すべきは改善
スキンケアとは、肌トラブルを緩和を目的としたツールのひとつです。
毛穴を治す・無くすといったことは出来ませんが、毛穴を目立ちにくくする努力をすることは可能です。
肌トラブルを緩和することで、毛穴の目立たない土台を育てていくイメージですね。
脂性肌はなぜ毛穴が開くのか

諸説ありますが、皮脂中の不飽和脂肪酸によって、毛穴出口周りの皮膚がうまく形成されないこと(不全角化状態)が原因ではないかと言われています。
資生堂は、国内外問わず女性の肌悩みとして常に挙げられる「毛穴の目立ち」に関して
女性の肌悩みNo.2の「毛穴の目立ち」は、解消できる!? | IFSCC大会受賞研究の紹介 | 研究 / サプライネットワーク | 資生堂 企業情報 (shiseido.com)
科学的な解析を行った結果、以下の3つの特徴を明らかにしました。
① 外観上の毛穴の目立ちは、毛孔部(毛の出口部分)周囲の「すり鉢状構造」に起因
していること。(図)
② この部分の角質細胞は、本来消失しているはずの核が存在している、いわゆる「不
全角化状態(※1)」になっていること。
③ 毛穴の目立ちと皮脂分泌量は相関しており、特に皮脂中に含まれる不飽和遊離脂肪
酸の比率が毛穴の目立つ人ほど高く、これが不全角化の発生要因として働いている
こと。
つまり、毛穴が目立つ人間はもれなく皮脂が多く、さらにそのなかの不飽和有利脂肪酸の比率が高い人間はより毛穴が目立つ、と…。
毛穴の仕組みについてはメーカーや病院などによって解釈が違う場合もありますが、脂性肌による皮脂の過剰分泌が毛穴の開きに対しての一要因である可能性は高そうです。
不飽和脂肪酸とは

ちなみに不飽和脂肪酸とはなにかといいますと、有名なところでいうとオリーブオイルなどに含まれるオレイン酸です。
「悪玉コレステロールを減らそう!」とかいうパッケージでよく売られているあれですね。
なんだかお肌や体にいいイメージがありますが、
花王は、今回の検討で、皮脂の量と質が皮膚のバリア機能や水分量に悪影響を及ぼしている実態を明らかにしました。その中でも、ある一定量の皮脂分泌量があり不飽和脂肪酸の比率が高い皮膚は、バリア機能が低く、水分量も低いという関係を見いだしました。
花王 | 肌あれの新たな原因の解明へ 皮脂中の不飽和脂肪酸*1 をトラップする新技術を開発 (kao.com)
脂性肌のスキンケアにはあまり手放しで歓迎できるものではなさそうです。
脂性肌の毛穴向けスキンケア

いよいよ本題であるスキンケアですが、基本は「皮脂のバランスを整える」ことを目的としたスキンケアがおすすめです。
酸化や不全角化を起こす前に皮脂を落とし、それ以上皮脂が出るのを防ぐ。
このようなスキンケアを繰り返すことで、皮脂が出にくい肌作りを目指します。
【脂性肌毛穴ケア1】クレンジング

クレンジングを語る上でまず必要なのは、自分は本当に「脂性肌」なのか「インナードライ」なのかどうかです。脂性肌は水分が保持されつつ皮脂も多いため、水分を補給しようと皮脂が出ることに変わりはありません。逆にインナードライは水分が少なくいことが原因で皮脂が過剰に出ていることがあるため、うるおいを保持するケアも同時進行で行わなければなりません。
脂性肌向け
脂性肌の方が皮脂を落とすのであれば、第一選択肢として「油脂クレンジング」がおすすめです。
ここで注意して頂きたいのが「オイルクレンジング」ではなく「油脂クレンジング」ということ。
クレンジングは、ざっくり分けてしまうと以下の2種類に分類できます。
水性クレンジング | 油性クレンジング |
水性成分をベースに 界面活性剤(乳化剤)の力で落とす。 ヌルヌルせずさっぱりとした使い心地。 | 油性の成分をベースに 界面活性剤(乳化剤)の力で落とす。 油なので皮脂やメイクと馴染みやすい。 |
ジェル・リキッド等 | オイル・バーム・クリーム・ミルク系等 |
皮脂に油脂を足したらよけいに油っぽくなるイメージがありますが、
「顔が油っぽいからクレンジングはさっぱり水性」
と決めつけるのは、まだ早いかもしれません。
水性クレンジングは界面活性剤の力でメイクや皮脂を落とすことはできるものの、
油性に比べると、ややメイクや皮脂との馴染みが劣る使い心地のアイテムが多い印象です。
水と油を混ぜるよりも、油と油の方がすんなり混ざるのと同じ現象ですね。
汚れが落ちなければその分ゴシゴシと擦らなければいけなくなりますから、肌への刺激が懸念されます。
オイルクレンジング | 油脂クレンジング |
ミネラルオイルが主成分。 | 植物性オイルが主成分。 |
鉱物由来油等 | コメヌカ油、アルガンオイル等 |
「油脂クレンジング」とは、いわゆる植物性オイルが原料の油性クレンジングの通称です。
油性クレンジングの中でも肌と馴染みやすい植物性オイルを使うことで、肌の柔軟性の上昇や摩擦の軽減を目的として使用する方が多いようです。
脂性肌のクレンジングは「皮脂と汚れを刺激の少ない方法で落とす」ことが重要ですので、油脂クレンジングの特徴はまさに理想的ともいえます。
しかしあくまで通称ですので、メーカーが必ずしも「油脂クレンジング」と謳って販売しているわけではありません。
使用する場合は、原材料が植物オイルかどうか確認する必要があるためご注意下さい。
「脱脂力が強くてつっぱる」「油を落とすために界面活性剤が多い」と避けられがちな油性クレンジングですが、水性クレンジングとて界面活性剤で汚れ(油)を落とすわけですから、刺激性の強弱は一概に断定は出来ません。
あくまで目的は「皮脂と汚れを刺激の少ない方法で落とす」ことですので、実際に使用し肌負担が少なく感じられるものを選んで頂ければと思います。
インナードライ向け
インナードライの場合も「皮脂と汚れを刺激の少ない方法で落とす」という基本理念は変わりません。
脂性肌と同じく油脂クレンジングもおすすめではありますが、抵抗がないのであればベビーオイルも選択肢に入ります。
というのも、インナードライの方の中には界面活性剤が肌に合わず乾燥しているケースも少なくないからです。
ベビーオイルは洗浄力こそありませんが、メイクや日焼け止めなどが落としやすいものであれば油の特性で落とすことは不可能ではありません。皮脂でお化粧が落ちてしまうのと同じ原理ですね。
界面活性剤が含まれておりませんので、肌自体のうるおい成分を流してしまうリスクもその分低いと考えられます。
しかし「クレンジング」を目的とした商品ではありませんので、人によっては油膜感に違和感を感じたり、肌にオイルが詰まってよけいに肌荒れしてしまう場合もあります。
詳しいやり方などは上記リンクで確認できますので、興味があれば試してみるのもいいかもしれません。
【脂性肌毛穴ケア2】洗顔

毛穴に悩む脂性肌の方の中には「酵素洗顔」を使っている人も多いのではないでしょうか。
もちろん、実際に使っていて調子がいいのであれば問題はありません。
しかし、「毛穴の中まで汚れが取れないからもっと洗おう」と頻繁使ってしまっている方はいないでしょうか。
なにを隠そう、私もそのひとりでした。
酵素洗顔は脂性肌の毛穴に効く?
結論からいいますと、酵素洗顔で毛穴に詰まった角栓をすべて取りきることは出来ませんでした。
酵素洗顔の泡が直接当たる肌表面をツルツルにしたり、ニキビの予防には効果を感じましたが、私には肌への負担も強かったようで「赤み」や「皮脂バランスの悪化」につながってしまいました。
もちろん商品の種類や体質もありますので一概には言えませんが、「毛穴の汚れを酵素洗顔で根こそぎとる」ことを目的としているのであれば、あまりおすすめはできません。
クレンジングには「ダブル洗顔不要」のものもありますから、必ずしも洗顔料が必要とは限りません。
ですが使用するのであれば、クレンジングで残った油膜感が多少とれるくらい洗浄力がやさしいものがよいのではないでしょうか。シャンプーでも人気のアミノ酸系がおすすめです。
とはいえ、脂性肌やインナードライがいきなり洗浄力を落とした結果、角質がみるみる溜まり肌トラブルにつながるという話も珍しくはありません。
肌質は千差万別ですので、洗顔を変更する際は「週に1~2回」づつ様子を見ながら自分のベストを探して頂ければと思います。
【脂性肌毛穴ケア3】化粧水・美容液

化粧水や美容液を選んでいるとき「化粧水や美容液は成分が似通っているものが多い」と感じたことはないでしょうか?説明に書かれている効果まで似ているせいで、「どっちを買うか決められなかった」なんて方も居るかもしれませんね。
お気づきの通り、化粧水と美容液は配合されている成分が似通っているものが多く存在します。2つの違いとしては「水分補給」が主たる目的なのが化粧水、「肌悩みにピンポイントでアプローチする」のが目的なのが美容液です。成分濃度で差があるものが多い印象ですね。
化粧水→美容液の順で使うのが一般的でしたが、最近では導入美容液なども参入しその限りではありません。
ここで大事なのは「成分」と「使う順番」「組み合わせ」であり、その選択肢は多岐にわたります。
脂性肌毛穴おすすめ成分
成分名 | 説明 | 期待したい効果 |
アゼライン酸 | 小麦由来の天然成分。 ニキビや赤みの治療に使われる場合もある。 | 皮脂バランスを整える |
ナイアシンアミド | ビタミンB3の別名。 水溶性ビタミンの一種。 | 皮脂バランスを整える シミ予防など |
レチノール | ビタミンAの別名。 脂溶性ビタミンの一種。 | 皮脂バランスを整える 肌のキメを整える |
ビタミンC | 成分表にはアスコルビン酸と書かれる場合もある。 水溶性ビタミンの一種。 | 皮脂バランスを整える シミ予防など |
グリシルグリシン | アミノ酸由来の成分。 不飽和脂肪酸対策として使われる場合が多い。 | イオンバランスを整える うるおい保持 |
ここで、この記事で一番お話したかった「皮脂バランスを整える」こと目的とした成分のお話に移りましょう。
上の表の成分が、主に「脂性肌」向けのおすすめ成分です。
皮脂バランスを整えることを第一目的としたラインナップですが、毛穴の開きが目立つ原因といわれている不飽和脂肪酸へのアプローチとして「グリシルグリシン」も積極的に取り入れたいところ。
肝心の組み合わせ方ですが、これについては「肌との相性」「価格」「効果の有無」などを見ながら、模索していくしかありません。肌が荒れてしまえば元も子もありませんし、求めやすい価格でなければ使い続けられません。効果が無ければ、お金と手間が水の泡です。人ごとに肌も違いますから、「これは絶対に効く」というコスメは存在しないのです。
しかしながら、選び方についてはちょっとしたコツがあります。ぜひ、成分表記を見てみてください。目的の成分が上の方に書いてあるならば「デカデカとパッケージに成分名が書いてありながら、含有量がほんのちょっぴり」なんて失敗は少し防げるかもしれません。

上の画像は、上記成分を組み合わせたスキンケアを行った私の毛穴です。
スキンケア前とスキンケア後の、テカリの変化が伝わるでしょうか?
肌質改善が目的ではありますが、皮脂による化粧崩れ防止対策としても気に入っています。
高濃度なほど効果は高い?
ひとつ注意してほしいのが、「濃度が高い方がより効きそう!」と私のように最初から高濃度をガンガン使わないことです。どの成分もおすすめではありますが、高濃度は刺激が強く、ピリピリとしたかゆみや痛みを自覚するケースも少なくありません。
せっかく塗り込んだところで、深夜寝ながらかきむしれば効果はマイナスになりかねません。ぜひ低濃度か低頻度で、効果を最大限感じられる濃度や回数を順に試して頂ければと思います。また、高濃度の化粧品同士はものによって「併用不可」の場合がありますので、使用方法やタイミングにはご注意くださいね。
【脂性肌毛穴ケア4】乳液・クリーム

脂性肌に必ずしも乳液やクリームが必要かと問われれば、必ずしもそうではありません。保湿力の高い化粧水や美容液だけで事足りてしまう方もいらっしゃるでしょう。
ですが、同じくらい「脂性肌でも乳液やクリームが必要」な方もいらっしゃいます。インナードライがいい例ですね。先ほど皮脂抑制向けの成分をご紹介しましたが、インナードライがただ皮脂抑制だけをしたら、今度は乾燥肌のできあがりです。
脂性肌毛穴おすすめ成分
成分名 | 期待したい効果 |
ヒアルロン酸 | 潤いを与える・ハリを与える |
アミノ酸(NMF) | 乾燥を防ぐ・水分バランス調整 |
セラミド | 乾燥を防ぐ・健やかに保つ |
コラーゲン | ハリを与える |
トラネキサム酸 | 肌荒れを防ぐ・健やかに保つ |
脂性肌の方にも、保湿は無関係ではありません。
毛穴の水分を守ることにより、角栓のスムーズな入れ替わりをサポートすることは不可能ではないからです。
化粧水・美容液の項目でご紹介した成分をクリームで取り込むのもいいですし、逆にうるおい成分を化粧水で組みこんで、美容液の刺激を抑えるのもおすすめです。刺激が強くなりがちなレチノールと、皮膚を健やかに保つセラミドなどの組み合わせが人気ですね。
【脂性肌毛穴ケア5】日焼け止め

UVによる毛穴へのダイレクトな刺激を防ぐため、朝は日焼け止めも取り入れたいところ。
単純にSPFやPAの数値で選んでも問題はありませんが、「日焼け止めを使うと毛穴が詰まる」と感じているのであれば「酸化亜鉛」フリーのアイテムを選んでみてもいいかもしれません。
酸化亜鉛は紫外線防御や収れん効果(皮脂を固めて発汗を抑える)を目的として皮脂崩れ防止下地などにも配合されている優秀な成分ですが、一方でその性質上、毛穴詰まりを感じるという声は少なくありません。
皮脂崩れ防止をメインにスキンケアやコスメを選んでいる場合は、今一度成分を見直してみてもいいかもしれませんね。
脂性肌に毛穴パックやピーリングは必要?

比較的安価で手軽に手に入れやすく、角栓がびっしりとれて気持ちがいい角栓パック。ですが、使用した後の肌の様子はいかがでしょうか?
もし赤くなっているのであれば、毛穴パックは必要ないのではないかと思います。いくら丁寧にスキンケアをしても、毛穴パックで炎症を起こし皮脂が増加しては意味がありません。
皮脂とタンパク質で構成されている角栓は、根本的な問題が解決していなければ一度取り除いてもすぐに新しく生まれます。脂性肌の毛穴スキンケアの目標は、このサイクルを緩やかにして毛穴を目立ちにくくすることであり、炎症による皮脂の増加は避けたいパターンです。
ピーリングはいろいろな種類がありますが、肌のざらつきをとるという意味であればとても優秀なスキンケアです。
しかし同時に肌が薄くなり、刺激に弱くなる可能性も否めません。使うのであれば使用頻度に気を付け保湿や保護を忘れずに。
脂性肌毛穴と上手に付き合う

毛穴ケアを目的としたスキンケアはいろいろありますが、肌の種類によってそのアプローチ方法にかなり違いがあります。
お金をかければいいというものでも、手間をかければいいといものでもなく。自分にベストなスキンケアは、自分で地道に試して正解を探していくしかありません。
ただ「脂性肌」という肌質に目を向ければ、スキンケアで目指したい方向が少しはっきりするのではないでしょうか。この記事でちょっとでもその膨大な選択肢を絞れたのであれば幸いです。
では、毛穴と戦う同志の皆様。本日も健闘を祈ります。